

顧客の質を上げるデザイン
顧客の質を上げるデザイン
若かりし頃、とあるカフェでアルバイトをした。老年の男性のグループが常連にいたのだが、彼らの目当ては珈琲ではなく、ひとりの女性店員である。毎日のように店に来てはもっとも安い注文をし、女性をからかい、カウンター席に長居する。むろん、そのような雰囲気のわるい席の周囲は空いて、客も減る。自分の店なら出入り禁止にするが、私はただのアルバイトだ。何も策を講じない店長をみて、商売をする気がないのだなと思った。
お客様は神様です
という言葉は、デフレで失われつづけるこの国では機能不全を起こしつつある。客はきちんと見定めなければ、商売は生き残れない。どうにもご利益がないと思ったら、神様はなんと貧乏神でした、という話のオチは、もう子供に読み聞かせる昔話ではない。かつてジャパン・アズ・ナンバーワンといわれたお花畑は今や枯凋の大地、神様は減る一方である。
商売存続の要件に、新規の客を得ること同様「顧客の質を上げること」がある。日本経済は、もはや宿痾と化したデフレに倒れつつある。商況が縮退する慣性にある場合、既存客のなかから脱落者がでることは避けられない。よりよき顧客へアプローチできなければ、商売のエントロピーは加速度的に退却を要求してくる。
これからの広告戦略・戦術は「顧客の質を上げること」に焦点を絞ることが重要だろう。単にリピートねらいのターゲティングから、よりよき顧客獲得のためのターゲティング。そこにはルーティン思考、ルーティンワークではないデザインワークがもとめられる。旧態依然のデザインワークに甘んじるプロダクションに未来のなさを明解し、飛び出したのは我ながら先見の明であったと今、思う。
